重度知的障がい者の方への支援アプローチの工夫
朝、寝起きが得意でないS様、課題だった尿失禁が消失し、トイレでの排泄が定着した支援内容をご紹介致します。
言語コミュニケーションが難しいS様、童謡の音楽鑑賞や食事、休日の行動援護サービス(ヘルパー外出)での外食を好まれている方で、東京都立川市のグループホーム友セカンドに入居されている方です。てんかん発作をお持ちの方で、御家族のご要望で外出時にはヘッドギアを装着されています。
食事の準備で良い匂いがしてくると[食事の提供をしてほしい]と身振りで要望されたり、外出の要望でヘッドギアを被りこちらも身振りで[出かけたい]と訴えがあります。【食事はまだ提供しない】や【外出は今日はない】と否定的な誘導をするのではなく、気持ちの切替えが出来るよう、御本人が余暇で過ごせるDVDデッキや音楽鑑賞を勧めると要望は消失し、集団生活のリズムに戻れ穏やかに過ごされます。
排泄に支援を要するS様、便秘で3日間の排便が確認出来ない日は4日目の夕食時薬で、処方されている下剤の投薬支援が必要です。又、排尿も障がい特性に配慮が必要で、非常に多量の尿を膀胱にため込む特性があります。定期的なトイレ誘導を要するのですが、誘導の拒否が多々有り、改善案が必要でした。
担当だった世話人Aが、主任・サービス管理責任者と検討し、御本人がトイレ誘導を単体で受け入れる事が出来ないのであれば、前後関係で別の出来事と関連付けして環境設定する事となりました。
御本人の興味を引くと推測される【食事】との関連付けに着目しました。
【食事】と【トイレ】、A4サイズの写真カードをそれぞれ作成し、[トイレ利用後に食事提供である]事を矢印を用いて2枚の写真カードで提示する支援に着手しました。
御本人の居室入口壁にスペースを作成させて頂き、朝、御本人の離床前に写真カードを掲示し準備します。御本人の離床を確認し、カードを【トイレ】、【食事】の順番で指差し提示し支援開始です。御本人はきちんとカード2枚をご覧になり、トイレで排泄する事が各段に多くなりました。100%のトイレ利用ではないまでも、尿失禁は0件に消失しました。
今回、尿失禁の消失を想定して取り組んだ食事とトイレを関連付けした2個提示の支援、非常に御本人に親切な内容だったと思います。トイレ利用だけでは御本人に利益は大きなものではなく、トイレ利用後に食事が摂れる事が目に見える利益と認識出来たものでした。今後、御本人へは、スケジュールの可視化と並行して[トイレの後に行動援護で外出]など、自立支援に取り組んでいく事を検討しています。
課題行動の消失と共に、御本人の自己肯定感を高める事に繋がる今回の支援、障がい者支援の醍醐味と思えるものと考え、今回、紹介させて頂きました。今後とも、利用者の方々がより良い生活を送って頂けるよう日々の支援に精進して参ります。
2024.08.21 友セカンド世話人 下平泰士